指示や命令が部下だけでは人は動かない、リーダーの影響力が鍵になる
ほぼすべての組織、特に中小企業において、社員の主体性を期待し、高めることが課題になっていると思います。
ところが、そのほとんどの組織で、その課題は解決できていません。それは、リーダーのリーダーシップスタイルの変革が進んでいないからだと考えます。
リーダーシップの変革は全ての組織で起きている
リーダーシップのスタイルは、現代の企業だけでなく、軍隊を含むあらゆる組織でも変化をもたらしています。かつては厳格な命令系統が主流であった軍隊でも、現場の状況に即応できる柔軟な判断や自発的なリーダーシップが求められるようになっています。
指示待ちの部下を持つことのリスクは、組織が直面する変化や危機に迅速に対応できないことにあります。そのため、現場のメンバーがリーダーの意図を理解し、自らの判断で行動できるようなリーダーシップへの移行が進んでいます。
このような変革の中で、リーダーにとって必要なのは「影響力」の活用です。影響力を高めるためには、リーダー自身が理念に基づいた一貫した行動を取り、ビジョンに向かって自らが先頭に立って実践する姿勢が欠かせません。
社員やメンバーは、リーダーの言葉だけではなく、行動や姿勢に大きく影響を受けます。リーダーが自らの行動でビジョンを体現することで、メンバーはリーダーを信頼し、共感を覚え、自発的に行動しようという意識が芽生えるのです。
こうした影響力のあるリーダーシップは、持続可能な組織の発展を促進します。短期的な指示や命令で成果を上げることは難しくなっている今、組織の中で「影響力」を発揮し、メンバーを自主的に成長させるリーダーシップが必要です。
それが、ドラッカーが予見した時代の変化に適応する唯一の方法であり、リーダーシップの未来を形作る鍵となるのです。
つまり、リーダーシップとは、単に組織やチームに目標を示し、指示を与えるだけではなく、人々に影響を与え、共にビジョンを達成するために動機づける力です。
理念やビジョンだけで、人は動かない
そこで、多くのリーダーがビジョンや理念、そして明確な目標を掲げますが、それだけでは人は動きません。なぜなら、理念や目標はリーダー自身が掲げたものであっても、それがメンバー一人ひとりの「心」に届かなければ、行動につながらないからです。
このようなことは、多くの経営者が、理念やビジョンの重要性として、よく理解しています。ビジネス書やセミナーなどで得た知識から、企業経営には明確な理念が不可欠であり、未来を見据えたビジョンが組織を導く羅針盤であることを知っているでしょう。
そのため、多くの企業にはすでに立派な理念が掲げられ、ビジョンも存在しています。実際に、企業のホームページや会社案内には、会社の理念やビジョンが明記されていることがほとんどです。
しかし、現実の経営において、この理念やビジョンが社員一人ひとりに浸透し、日々の行動に反映されているかというと、そうでないケースが多々見られます。多くの経営者が、理念やビジョンの浸透を目指して様々な取り組みを行っています。
朝礼での唱和や、定期的な会議での繰り返しの説明、掲示板に理念を掲げるなどの手法です。それにも関わらず、経営者の意図が社員に届かず、実際の行動に結びつかないという悩みを抱える経営者は少なくありません。
なぜ、このようなギャップが生まれるのでしょうか。その答えは、「影響力」というリーダーシップの本質にあります。多くの場合、経営者が理念やビジョンを浸透させるために用いる手段が、指示や命令、朝礼での唱和といった「外的な働きかけ」に集中していることが原因です。もちろん、これらの方法が全く効果がないわけではありませんが、それだけでは不十分です。
なぜなら、指示や命令は一時的に人を動かすことはできても、心からの共感や自主的な行動を引き出すことはできないからです。