リーダーシップ7つの習慣4:「優れたチームをつくる」
優れたチームとは、どんな状況であっても、成果を出し続けるチームです。こんなチームをつくるために、リーダーが実践していくことは、5つです。
一つ目は、ヴィジョン、目標の共有、二つ目は、徹底した情報共有、三つ目は、行動促進の為のメンバー全員の役割と責任を明確にすること、四つ目は、メンバーの成長につながる評価、フィードバック、そして五つ目が、これまでの四つを推進するための環境づくりです。
チームを構成するのは人です。当たり前の話ですが、人は外圧で強制的に行動させられるものではありません。
自らの意志によって行動し、そうすることで最高のパフォーマンスを発揮していきます。
従って、リーダーがやれることは、コントロールではなく、自らの意志で行動することを誘因する環境づくりにあります。
それでは、5つの実践要素をもう少し詳しく示していきたいと思います。
ヴィジョン、目標の共有
事務所の壁に掲げるだけのヴィジョン、朝礼時に唱和するだけのヴィジョンに害は有ってもメリットはありません。
目標も同じです。期の初めに示し、期の終わりに数字だけ合わせるだけの目標はチームに良い影響をもたらすことはありません。
ヴィジョン、目標は行動に結びつくものであることが必要です。その為には、具体的であることが求められます。
例えば、「我々は、地域社会に貢献し、無くてはならない存在となる」というような、理念のような表現は、ヴィジョンとしては避ける方が良いです。
これが、理念ならば、日々の活動を振り返ったり、何か問題があった時に、理念に照らして行動を選択するという使い方ができます。
しかし、ヴィジョンとして見たら、「いいね」で終わり、未来に向けた行動がぼやけます。
そこで、具体的に、「2030年までに、○○の分野で、売上、利益、シェアーが日本一の企業となっている」
というように具体的なれば、まず今期の戦略は、目標としてシェアーで日本一を目指す。というように次の目標などの設定とヴィジョンが繋がってきます。
そして、チームメンバーが同じヴィジョン、目標に向かって進み始めることが可能になります。
つまり、ヴィジョン、目標の共有は、ワクワクするだけでは足りず、ヴィジョン、目標そして目標達成の為の活動が繋がって一貫性を保持していることが重要です。
「いいね」「ワクワクする」だけで終わってしまったら、事務所の壁に飾られるだけのものになってしまいます。
徹底した情報共有
人は主体的に活動する為には、どこを目指すのかのゴールが明確になっている、つまりヴィジョン、目標が分かっていることが必要です。
そして、ゴールに向かって、What(何をするのか)も分かっていなければ動けません。
このWhat(何をするのか)を主体的に選択する為には、知識、スキル、選択の為の情報、誰と組めばよいのか等の情報が不可欠です。
ところが、過去はリーダーの主導のもとでの活動が常識であった為、多くの情報はリーダーだけが知っていて、メンバーはリーダーの指示が無ければ動けなかった。
また、メンバーが、自分自身の活動を評価する上でも、リーダーに聞かなければ、活動の評価も難しい場合もありました。
リーダーにとっても、状況を判断し、次の一手を打つための現場の情報をメンバーから得られなければならない為、常に報告を求めなければならず、常にメンバーを管理する、管理組織になっていたのではないでしょうか。
ところが、このやり方だと、今の変化にはついていけない、メンバーのモチベーションも落ち、リーダーも疲弊する状況にもなってしまう。
ここを打ち破る方法が、実は情報共有です。個人情報以外の社内の情報はすべて共有するぐらいの気持ちで情報共有をすすめることが、メンバー個々の主体的行動を引き出すレバレッジになります。
役割と責任を明確にする
役割と責任を明確にする目的は、自分が何を求められ、どんな成果を出すことを求められているのかを知ること、
そして、他のメンバー(リーダーも含めて)が、どんな役割を持ち、どんな成果を出そうとしているのが分かることです。
これらが分かることで、自分自身の発揮しているパフォーマンスが分かり、まだ足りていない知識や能力、十分持っている知識や能力などが判断出来てきます。
そして、チームのゴールに向かって、今、成果を出すために、自分に足りていないものを誰に応援を頼んだり、アドバイスをもらえばよいかも、分かります。
つまりは、チームビルディングを効果的に実践する上でも役割と責任が共有されていることが必要になります。
優れたチームには、信頼関係の構築とお互いの協力体制が重要だと、簡単に表現されることがありますが、まずはお互いの役割と責任を知らなければ始まりません。
そして、リーダーはヴィジョンや目標に向かう為に、メンバーの役割と責任に過剰なダブリや重要なヌケがないかを見極め、適切に配置することが求められます。
評価とフィードバック
評価とフィードバックに関して、リーダーが前提として持っておかなければならないことは、メンバーの成長とチームのゴール達成の為に行うということです。
決して、昇給や昇格(この逆もあるかもしれません)の為に評価をするのではありません。
リーダーは自分自身で売上を稼いだりすることはありません。メンバーに動いてもらわなければ求めるチームの成果は出せません。
この観点から、リーダーの最も重要な役割の中の一つが、メンバーの評価です。
この評価を適切に行うには(年次評価も含めて)、役割と責任を知っていなければなりません。役割と責任に照らして評価を実施する必要があるからです。
そして、日々の活動に関しても把握しておくことが必要です。その為には、定期的な1on1、現場の視察も必要になります。
この1on1や視察でのフィードバックも、評価につなげる為にも必要です。年次評価などで、お互いが納得できる評価を実現する為にも定期的なフィードバックも必要です。
このフィードバックも役割と責任を基準として行いますが、良かったポイント、改善ポイントを具体的にすることで、メンバーの成長促進にもモチベーションアップにもつながります。
またフィードバックだけではなく、メンバーが求めるサポートも確認し、適切なサポートを行うこともリーダーの役割です。
環境づくり
昔からよく言われることで、「過去と他人は変えられない」という言葉があります。リーダーと言えど、他人、つまり個々のメンバーは変えられない。
しかし、リーダーは環境を変えることは可能です。そして、人は環境に大きく影響を受けます。
例えば、チームメンバーが常に、相談したり議論したりする行動を求めるならば、デスクが近かったり、議論する為のホワイトボードが常に近くにある方が議論はしやすくなります。
そして、リーダーがメンバーの主体性を求めるのならば、メンバーの自発的なアイディアや活動を優先し、リーダーの指示を少なくすれば、自然と自立して考え、行動するようになることも考えられます。
このように、What(何をするか)を求めるよりも、その求める行動を誘発する環境をつくっていく方が、実は早く行動が引き起こされ、求める成果を得ることができる。
しかも、成果が得られるだけでなく、メンバーの成長や仕事へのやりがいもつくり出せる。
リーダーは、どうすればメンバーが目標に向かって最大のパフォーマンスを発揮させるかに意識を向けるのではなく、どんな環境であれば最大のパフォーマンスが引き出されるかに意識を向ける方が望む結果を生み出すことができる。
まとめ
どんな状況下でも成果を出せるチームをつくるために、リーダーが取る行動は、メンバーに行動を指示するのではなく、メンバーが主体的に行動する環境や仕組みに集中することが大事になります。
そして、5つの要素は、この仕組みや環境づくりを示しています。お気づきのように、これら5つの要素は独立したものではなく、繋がっています。
5つの要素が一貫性を持って実践されることによって、チームは強く、優秀なチームになっていきます。
どれ一つ抜けていても、単独では、優秀なチームもメンバーの成長も期待できません。
そして、この5つの要素は、リーダー自身の意志と力で実践可能です。是非、チャレンジしていただければと思います。