売上を考える前に生産性を上げる

~P・Fドラッカーから学ぶDX時代に必須の主体的マネージメント~

今、なぜドラッカーから学ばなければならないのか

 日本の一人当たりの労働生産性はアメリカの僅か56%にしか満たない、G7諸国の中で最下位でありしかも6位と二桁以上みぞを開けられている。

 そしてOECD加盟国38か国中27位です。もはや一流の経済大国だと胸を張って言えないように思います。

 これは、日本の企業が過去の経済成長にあぐらをかいて、怠け者になった結果でしょうか、いいえ違います。頑張ってはいるけれど、成果が出ていないと考えるべきです。

 頑張っても成果が出ていないのは、頑張る方向が間違っているからです。売上を上げることを経営の中心に置き、生産性を高めることに関しての主体的に動いていないからだと思います。

 もちろん、工場長を中心にして、工場で働く社員は、生産性を高めることに関心は高いと思いますが、経営戦略の柱に置いている会社は少ないように思います。

 生産性を高めることは、工場だけでなく営業部門、マーケティング部門、開発そして人事や経理など会社のあらゆる部門で主体的に取り組むことが必要です。

 ただ、営業なら売上、開発なら新製品開発というように、目の前の結果に意識がむいてしまうのも人の本能的な動きなので、生産性に意識が向かないのも仕方がないとも言えます。

 そして、もう一つの生産性に注力しなかった理由として考えられるのは、どのように生産性を上げるのかが分からないがゆえに、主体的に動こうにも動けない事情があるかもしれません。

 ところが、ドラッカーは20年以上も前から、生産性を上げる方法について示してきています。今だからこそあらためて学ぶことによって、暗闇から光を見つけ、明るく輝く未来への道をあることが可能になると思います。

 そこで今回はドラッカーの著書「プロフェッショナルの条件」から、今私たちが学ぶべきことを考察も含めて考えていきたいと思います。

会社の業績が上がらない理由

 「プロフェッショナルの条件」では、まず世界で起こっている変化について示されています。20年以上も前の変化ですが、もう一度振り返りながら、現状の状況を踏まえて、この変化が私たちのビジネスにどう影響しているのかを考えたいと思います。

 まず大きな変化は、資本主義からポスト資本主義への変化で、2つの革命から生じています。

 一つは、生産性革命です。産業革命以降で産業の中心が土地から資本へと移行し資本主義がはじまりました。しかし、資本主義においても知識は不要だったとドラッカーは述べています。

 つまり、機械の使い方に慣れ、一つの技能に熟練していってもそれは知識ではないということです。ただ慣れていっただけです。

 知識とは使うことと定義できます。一人の技能が上がっただけでは知識ではありません。その技能を分析し、他の人が早くその技能に達するようにすること、又は人に頼らなくても機械やシステムでその技能による成果を出していく方法を見つける事です。

 そうして、組織の生産性が飛躍的に向上することが知識を使うということです。そしてドラッカーが描いた20年前と比べ、今は知識を使うことを主体的に取り組むことが必須になってきていると言えます。

 この知識を使うことを主体的に取り組むことに気づかず、資本主義の勝ちパターンを続けていることが生産性を上げられていない理由だと思います。

 現状、伸び悩んでいる会社は、技能や知識を身につけることには主体的に取り組んでも、使うということが出来ていないと思います。

 特に中小企業において、この30年間大きな成長が実現できていない根本的な理由の一つがここにあると思います。

 もう一つの革命はマネジメント革命です。知識を使い生産性を上げることが重要になってきたわけですから、マネジメントはどこに知識を使い、知識と知識を繋げることで相乗効果を高めることが必要になってきた。これがマネジメント革命です。

 このようにマネジメントは、部下の仕事に責任を持つことから、知識の適用と知識の働きに責任を持つことで、組織の生産性を高めることが役割になってきています。

 そして、組織は常に生産性を高めていくことが求められる。理由は組織は社会に貢献する為に存在するので、社会がもっともっと良くなるためには組織がこれで良いと止まっていては社会も停滞するからです。

 営利組織であろうが非営利であろうが、組織は日々改善し続けていく使命があり、その改善の先にイノベーションがあるとも言えます。

 ところが、人は生活に安定を求める。ここにマネジメントの重要性があります。何もしなければ安定を求める人が多くなる。しかし組織のなかの仕事をする人は、日々改善を進めていかなければならないという一見すると矛盾に見えそうなことにマネジメントは対応することが求められます。

 このマネジメント革命にも日本は乗り遅れていそうです。組織の生産性向上に向けて日々進化改善するという意識よりも、決まった行動を繰り返すことを良いとする。

 安定を求める社員にとっては、決まった行動に熟練することが安定につながるので、組織の生産性はわずかな熟練によるレベルで落ち着く。

 ただこの遅れも、マネジメントをどの方向で進めるかが分からなかったことが理由です。だから、今あらためて生産性向上とマネジメントの方向を見直して進めることが未来を創り上げることになります。

自分の強みを知り、主体的に伸ばすことがDX時代には必須

 生産性を考える上で押さえるポイントは、人にあります。人を知識不要の労働力として捉えるのは資本主義の時代で終わっています。

 そして、リーダーは組織の生産性を日々進化改善させていくために、知識を使う人材の育成と活用することがマネジメント革命でした。

 そこで、仕事そして働くことにどんな意味を持ってるかに気づき、その働き方を自分自身はもちろん、社員一人一人に求めていくことが必要になります。

 その第一歩として、自分の強みを知ることからはじめます。ここで聞こえてくるのが、「自分には強みなんてない」という声です。

 この声がやっかいですが、考えてみてください。誰一人不要な人材など存在しません。なので、何かしら強みがあります。

 強みが見つからないのは、強みを見つけようとしないか、もしくは見つかった強みを伸ばそうとしていないかのどちらかだと肝に銘じて、強みを見つけましょう。

 そして、強みは「やり抜く力」や「チャレンジする姿勢」なども含まれます。成果が出る技能や知識だけではないことも頭に入れておきましょう。なぜならば、「やり抜く力」や「チャレンジする姿勢」などは、技能や知識を得る基本になるからです。

 さらに他人と比較しすぎるのも強みを見つけられない理由になります。まずは、自分自身が強みだと認識し伸ばすことから初めて良いと思います。

 多様性が拡がっている時代です。似たような結果を出せる強みであっても必ず違いがあります。もし、違いが見つからない場合でも、協力すればより大きな強みになります。

 自信を持って、強みを見つけ、伸ばすことを進めていきましょう。そしてその強みを生かし、どんな役割を担うのかを明確にすることで、他者の強みを伸ばし、強みに集中する時間の使い方も大切です。そうすることで、強みがますます生きてくることになる。

 次に考えることは、この強みで、あなたは組織やチームに対してどんな貢献ができるかを明確にする。これが役割と責任へと繋がるわけです。

 組織やチームでのあなたのポジションは役職で明らかになるのではなく、役割と責任によって明らかになるということになります。

 社会人1年目でもアルバイト、パート社員であっても、仕事に関わるということは役割と責任があります。

 もちろん、経験や知識、技能によって役割も変化し、責任も変化していきます。そしてマネジメントはメンバー個々の役割と責任を把握し、チームのゴール達成に向けて役割を振り分けていくことで、生産性の高いチームができることになります。

 このように自分の強みが何であり、それがチームのどのような役割を担い、どのように貢献していくかを知り、自分を成長させていくマネジメントが求められることになります。

リーダーが主体的に取り組むのは目の前の問題ではない

スティーブン・R・コビー著「7つの習慣」から引用

 あなたは一日(24時間)の中で、何に最も時間を使っていますか?

 睡眠、目の前の問題解決、ルーティンの仕事・・・など、24時間は全ての人に平等に与えられています。その時間を何に使うかが自らのマネジメントにとって大切だとドラッカー氏言います。

 このことは、スティーブン・R・コビー博士の「7つの習慣」のなかでも語られていることなので、その大切さがわかります。

 「7つの習慣」では、重要度と緊急度の2軸で、何に時間を使うことが大切かが描かれています。第一象限は重要で緊急、第二象限は重要だけど緊急ではない、第三象限は重要ではないけど、緊急そして第四象限は重要でも緊急でもない

 自分の強みを伸ばし、集中するということは、第二象限の重要だけど緊急ではないことに入ります。

 ここの優先事項を実践できず、目の前の緊急事項に時間を集中させることは、個人としてもチームとしても生産性を高められない要因と言えます。

 ところが分かっていても、第一象限の重要で緊急な事に多くの時間を使ってしまうのが人です。それが人の本能だからです。今日生きていなければ明日は無い。ゆえに人の本能は目の前の事に意識が向きます。

だ からこそリーダーの役割が組織の未来を決めることになります。第二象限である重要だけど緊急ではないことに、自らをマネジメントすることと、会社の生産性を高める為に組織の第二象限を定めて行動することが会社の業績を上げる最も早い方法です。

イノベーションと意思決定の法則

 これまでのことから、組織について考え直さないといけないことがあります。それは、組織は常にイノベーションを起こしていかなくてはならないということです。

 その為のプロセスは、

  1. 機会の分析からはじめる
  2. 社外に出て、問いかけ、見て、聞いて体験する
  3. 複雑に(難しく)せず単純化する
  4. 小さくスタートする
  5. ニッチで良いのでNo1を狙う

これらの5つをドラッカーは示しています

 ここで注目したいのは3と4の項目です。イノベーションを誰も見たことのないような大発明と捉えるのではなく、少しの工夫、改善の中にイノベーションがあることを示唆しています。

 また、このプロセスを通して、イノベーションは特別なものではなく、企業にとって仕事の一つであることが理解できます。

 仕事であるという理解によって、会社の中のすべての部門にイノベーションを成果として期待するのが当然だと分かります。

 このようなイノベーションを仕事として実践していくうえでの意思決定も対せつぃになります。リーダーは役割として意思決定のプロセスを進めていくことが通常の業務として捉えることになります。

 この意思決定の原則もドラッカーが示してくれています。そしてこれに従って実施していくことで組織は前に進んでいくことができます。

 その原則とは

  1. 問題とは、その組織が持つ基本的な問題と認識する
  2. 決定が満たすべき必要条件を明確にする
  3. 何が正しいかを考える(誰が正しいか、何が受け入れやすいかでは無い)
  4. 決定は行動の為にある
  5. 満場一致に注意する
  6. 決定が正しいとは考えない。

 この意思決定の原則には、社会が絶えず変化し続ける状況の中で、目の前に見える問題が解決すべき真の課題とは限らないことを前提としています。

 目の前で起きている様々な問題に惑わされず、本質的課題はどこにあるのか!そしてその解決によって本当に得たいものは何なのかを見極めることが重要になります。

 そして、知識を使う時代にあっては、一人一人が専門家である。それゆえに、社長が言うから、年長者が言うから正しいとは限らないという認識も当たり前ながら必要です。

 さらに多様性を求め活かそうとするならば、満場一致こそが特殊だと考えなければなりません。多様性を求めながら、意見の対立や意見の違いで会議が紛糾することを恐れるのは言動不一致です。そしてもし、普通に満場一致が常に起きているとしたら組織は機能不全を起こしてるかもしれません。

 会議が紛糾しても決定しなければ行動には進まない。なのでどこかで何らかの方法で決定することが必要になります。そして一度決定された行動は全員一致で行動する。これがコンセンサスのあり方です。

 全一致で行動すれば、結果も早く出てきます。その結果が望む結果でなければ行動を修正すればよいだけです。決めることが出来なかったり、表面的には合意していても腹の中では反対し、行動しないということは避けたいことです。

 ここまでのイノベーションや意思決定の原則を見てくると、「こんなことをしないといけないリーダーは特別な人間にしかつとまらない」と思う人がいるかもしれない。

 しかし、その思い込みは間違いです。知識をどう適用させていくか、その為に社員とヴィジョンや目標の共有を行う。社員がどのような強みを持っているのかを知るために、しっかりと話し、行動を観る。

 そのうえで、イノベーションのプロセスの中で社員や協力会社に強みを生かせるように動いてもらう。意思決定の原則に従って、社員の協力を得ることを進めていけばよいことになります。

 つまり、リーダーは仕事であり役割であることと、リーダーの貢献は何なのかを知り、その為に必要な行動を起こせばよいということになります。

 一人で何でもやろうとするリーダーは、これからの時代には大きな成果を出せないのかもしれません。

まとめ 自己実現への挑戦は続く

 最後に考えたいことは、会社に勤めていても、一つの会社にずっと在籍することが難しくなってきていることです。会社を経営していても一つの事業をずっとやり続けることが難しくなっている時代になっていることです。

 なぜならば、単純に人の寿命が延びているからです。ちなみに、2020年のデータで日本人の健康寿命は女性で75才、男性で73才です。

 仮に22才で社会に出たとしても50年以上は働けることになります。定年が60才とすれば、定年後10年以上も元気でいることになります。

 なので、人生を生きる上での人生設計を早くから視野に入れて準備をすることを提案します。このような、あらかじめ起こりうることを想定して準備するのがプロフェッショナルなのかもしれません。

 成功法則とは決して難しくなく、シンプルだと思います。これまで示してきたこともいたってシンプルです。

 しかし、前にも書きましたが、人は目の前のことに意識が奪われます。未来のことは二の次になってしまうのが本能です。

ここに、シンプルであっても実践することの難しさがあります。一人だけの挑戦はなおさら困難です。

 そして、この難しさは能力の問題ではないことを理解してほしいと思います。人間の本能の問題です。だからそれを分かっているリーダーは外部のコンサルやコーチの力を借りているのです。

 最後まで読んでくださった皆さんには是非、このシンプルな成功法則をやり続けていただければと思います。その為のサポートを当社は行っています。何かお困りごとなど気軽にお問合せいただければと思います。

 最後に、私たちBigBangは、皆さんの挑戦を様々な専門家がサポートいたします。私たちにご興味ある方は以下のURLをクリックしていただければ幸いです。

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