BIG THINGS~行動しなければ意味が無い~

今回は、皆さんにビジネス書「BIG THINGS」を紹介したいと思います。著者ははーナード大学第一BT教授であり学科長である、ベント・フリウビヤ教授です。

BTというのは、Bayesian Thinking(ベイズ思考)の略で、確率論の一つであるベイズ統計学のことです。

つまり、著者は、このベイズ統計学をもとに様々なビッグプロジェクトを数字によって定量的に分析し、プロジェクトが陥る失敗の理由を示しています。もちろん、失敗の理由だけでなく、成功するための方法も示しています。

今回、この本を取り上げたのは、ビッグプロジェクトの失敗要因を知ることではなく、大小様々なプロジェクトに我々は日々、取り組んでいると思います。

営業活動に開発そして採用プロセスなども一つのプロジェクトだと捉えると、日々の業務がそもそもプロジェクトだと考えられます。

この本のメッセージには、我々が日々取り組む業務遂行にとっても大事なメッセージがあると思うので、是非、この後も読み進めていただければと思います。

まずは、この本のキーメッセージは何でしょうか、

それは「どんなにアイディアが斬新で独創的であっても、行動は独創的にはならない。経験と学習を積んだ専門家が十分な計画のもとに行動を進めることが成果を出す方法である」

これが、キーメッセージであると思います。ところが、独創的なアイディアに意識が持っていかれて、そんなアイディアが浮かんだ瞬間に、意識はバラ色の成果に向いて、ワクワクする。

それは、とっても良いことだと思うのですが、アイディアそしてビジョンだけでは成果が出ないのが、現実の世界です。行動しなければ結果はでません。

そんなことが、そのアイディアの規模が大きければ、大きいほど、国家プロジェクトレベルになると、余計にバラ色の成果が浮き彫りになり、それを実現させる行動計画が置き去りになるということです。

さらに、そのバラ色の成果に意識が向いた、専門家では無いリーダー達(国家レベルであれば政治家)が、行動を素早く進めたいという欲求が先に立ち、行動の為の準備が欠落してしまう。

この本では、このようなリスクを定量的に分析しているのですが、恐ろしいのは、プロジェクトを進める上で、予期せぬ出来事が、正規分布ではなく、ファットテールで起きるということです。

正規分布で予期しない事が起こるとすれば、頻繁に起こるであろうことは容易に想定でき、それ以外の予期しないことは限りなく少なくなります。なので対処は可能になります。

ところがファットテールで起きるということは、想定できない、予期しないネガティブな事が、かなりの頻度で起きるということです。(図1参照)

そして、プロジェクトの想定できないファットテールを引き出すのは、人の要因が大きいということがこの本のメッセージでもあります。

十分に時間をとり、リスク要因の検証や行動のシミュレーションをすることで、想定できない問題は減らすことができます。

さらに、想定できない事が起きた場合の対応方法もシミュレーションしておけば、問題が起きた場合も素早い行動がとれます。

「こんなこと言われなくても分かってますよ」と言うかもしれませんが、分かっていても、その場になれば行動しないのが人です。

それには、人の本能ともいうべき特長が関係してます。それは、成功要因としても考えられることなので、問題の理解を難しくするかもしれません。

その特長には、ビジョンに関係するものがあります。大きなビジョン、それが達成した時には多くの人が笑顔になるといったプロジェクトを実行しようと考えた場合に、人は、

  • リスクを考えるよりは始めることが大切だと考える
  • あれこれ手段を検討するより、早く決めて始めたくなる
  • 一度決めたら、リスク要因を見ないようにする

これらのような思考に入ってしまうと、想定する問題や行動のシミュレーションをしたとしても、大きなリスクは考えないようにする。

たとえ、誰かがリスクを提示したとしても、

「そんなことはめったに起きない。めったに起きない事でこのプロジェクトは止められない」というような考えがプロジェクトを進めてしまう。

このように、人が社会の為、皆の為と良かれと思って進めてしまうプロジェクトを確実に進めるにはどうすれば良いかが、次に重要なことになります。

この本では、3つの鍵になる成功のポイントをあげています。

一つ目は、Whyからはじめ、常にWhyを確認する

プロジェクト自体を目的にしてはいけないということです。このプロジェクトが何のために実行するのかを明確にして活動を計画し、実行すること

ところが、多くの失敗する事例は、この当初の目的が忘れられてしまう。例えば、オリンピックが国民を一致団結させる為に開催するという目的であったとします。

ところがオリンピックを開催することが目的になってしまう。国民の感情などはいつの間にか追いやられ、不要な建設物だけが残り、経費負担が後から重くのしかかる。

国民の一致団結を目的とするならば、開催準備期間の行動、開催中の行動そして開催後の行動がすべて、この目的に沿った形で計画、実行されていくことが真の成果であると考えられます。

また、プロジェクトがスタートし、進んでいくうちに目的から離れていくこともあると思います。そして、目的が達成されていないのに、プロジェクトをやりきった達成感から、自画自賛して終わることもあると思います。

「最後までやりきったことに価値がある」というようなもっともらしい言葉を残して。

だからこそ、Why(なぜこのプロジェクトを進めるのか)を当初から、終了まで常に忘れず、検証しながらすすめることが一番目に大切な事です。

二つ目は、小さなモジュールの組み合わせを考える

例えば、ニューヨークのエンパイアステートビルは、各階の構造が同じ構造になっているということです。

つまり、一つの階の連続で、高層ビルになっているということです。このメリットは、一つ一つが独立しているので、何か問題が起きれば、その部分のモジュールの修正ですむこと。そして、経験と学習を重ね、階が進むたびに熟練になってきて効率が良くなるということがあげられています。

どんなに複雑なものであっても、それを構成する部品などの組み合わせです。世界で一つしか無い物を作りたいから、部品も特殊なもので構成するとなると、複雑性は増し、予期せぬ問題が引き起こされます。

この本の事例では、イーロンマスクの自動車会社であるテスラの向上の事例が引き合いに出されています。

テスラの向上は、まずは一つの小さな工場を建設稼働させ、その隣に別の小さな工場を建設、稼働させる。これらの向上が組み合わさって一つの大きなテスラ工場が完成していることを示しています。

他にも、人工衛星にしても、スマートフォンでも使っている部品を使うことで、安価で素早く人工衛星をつくることも事例として示されています。

一つの大きな、ユニークなものをつくることを考えるのではなく、最小のモジュールの組み合わせで一つの大きくて、ユニークなものをつくるという発想がプロジェクトを成功させる大きな要因であることは間違いなさそうです。

三つめは、専門家と一緒にすすめる

当たり前のようで、当たり前には進まないのが、専門家と一緒にプロジェクトを進めることです。

しかし、これができていない事が、プロジェクトを失敗させる理由となります。

専門家にサポートを依頼しない理由には、頼みたくても資金が無く頼めない、専門家が見当たらない、探せないといった、依頼したいという意思はあってもできないこともあります。

そして問題は、最初から、専門家に依頼するという選択肢が無いことです。

オリンピックや万博などは、自国の産業を育てる、自国企業の成長を育む、企業などのプロジェクトでも、自社のノウハウを育成させるなどの理由で、外部の専門家に依頼せず、自分でやろうとする。

Why(なぜ)このプロジェクトを実行するのかという問いに対して、自国、自社のノウハウの育成であるのならば、それで良いのでしょう。

しかし、他に成果があるのであれば、確実に成果が出る方法は専門家に依頼することです。専門家と一緒に動くことで、学習することも可能です。

ところが、人は、専門家に学び、経験を積むというプロセスを、そのプロジェクトが国家の威信、自社の威信などといった、成果とは違う、人の感情的なところで、当たり前な事を排除してしまう。

まとめ

プロジェクトの大きさに関わらず、そのプロジェクトを成功に導くのは、リーダーや実行メンバーの能力にあるのでないと言えます。

Why(なぜ)、このプロジェクトをするのか?この質問を忘れずに、シミュレーションをしっかりと行い、十分な計画のもとに行動するかにあると思います。

プロジェクトを進める為の、経験やスキルが足りないのであれば、専門家に依頼すれば良い。自分たちの現状を知り、望む成果から見た、足りない課題を、楽観的ではなく、むしろ悲観的に捉えて、行動することです。

ビジョンは輝く、希望の持てるものであることが必要です。しかし、行動は、現実的である必要があります。実行できない行動計画には何の意義も意味もありません。

我々は、ビジョンの大切さを訴えてきましたが、それ以上に、行動に対して、意識を向けなければならないと思います。

ビジョンが、壁にかけられた額の中のものにならず、現実に向かう為には、現実的な行動に落とし込む必要があります。

このBIG THINGSという本は、ビジョン経営において、意識を向けなければならない行動計画の重要性を教えてくれていると思います。

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